【社会】ロボットと高齢者

外出した際に後期高齢者と思われる人がいると、つい注目してしまう。
特にシステム化されてるような飲食チェーン店などにおいては目が離せない。
というのも、かなりの高確率で何かしらのオモシロを起こしてくれるからである。

先日も「なんだかなぁ〰〰〰(@_@;)」と思う出来事があった。
某牛丼チェーンに家族で昼食を食べに訪れた時のこと。

そこのお店は入口のところで食券を購入してから入店するシステム。
当然私たち家族も食券を購入し、席につき、その後提供された料理を食べていた。

そこへ後期高齢者と思われる男性(おじいさん)が、食券も買わずに入って来るや、店員さんに「うどんはないかね?」と尋ねた。
うどんはメニューにないので、当然店員さんは「うどんはないですね」と。
「牛めしや定食ならありますんで、(入口を示して)あそこで食券を購入してください」と説明してその場を離れた。

するとおじいさんは食券の販売機の前に行き、しばらく眺めていたかと思うと、何も買わずにまた入店してきた。
そして入り口近くのカウンター席に座ると、財布から5千円札を取り出し、やってきた店員さんに「うどんはないかね?」と。
当然「ないですね」と店員さん。
するとおじいさんは「あんたに任せる」と5千円札を店員さんに差し出した。
なんと!?まさかの丸投げに衝撃!!

「いやぁ~…(-_-;)」困った様子でその場を離れる店員さん。
その後、他の人に声をかけるでもなく、誰かに声をかけられるでもなく、しばらくそのままお札を握りしめて佇んでいた。
そして何かを(うどん?)諦めたかのように立ち上がるとお店の外へと立ち去っていった。

何度も声をかけようかと思ったが、トラブルになっても困るので、モヤモヤしながら傍観していた。
歩いて行った先にはは20分くらいでうどん屋さんがあるので、もしかしたらうどんにありつけてるかもしれないと思い、それを願った。

今回のことでふたつ強く思うことがあった。

ひとつ目は高齢者がこまったちゃん問題

今回、この牛丼チェーンに紛れ込んでしまったおじいさん。
そもそもうどんが食べたいのにどうして牛丼屋さんに入ってきたのだろうか?
普通に生活してたら誰しもが聞いたことがあるはずの有名な牛丼屋さんなのだが…「定食があるならうどんもあるだろう」という感じだったのだろうか?
それとも純粋にこのお店を知らなかったのだろうか?
それにしてもあまりにも情報を持ってなさすぎるように思う。

その後、食券の販売機を前に成す術がなく撃沈。
確かにこのお店の販売機は、缶飲料の自販機のような商品や商品名が並んでいてそれぞれにボタンがあるタイプではなく、タッチパネルでページをめくっていかないと商品を選ぶことができないし、支払方法もたくさんあるので、わかりにくいと言えばわかりにくい。
使ったことがなければ戸惑うだろう。それは仕方ない。
けれど、このおじいさんがよくないのは「わからないことを他人に聞かない」ことだと思う。
店員さんなり、後ろに並んでる人なり、周りにいる人だれかに「教えて」と言えば済む話なのだから。
けれど、それをしない。

しかもその後も悪手の連続。
店員さんにお金を差し出し、「あんたに任せる」と。
店員さんにそっぽを向かれてからは、ただただじっと誰かに声をかけられるのを待つかのように時々辺りを見回しながら座っていた。

完全なる思考停止だ。
そのおじいさんがどんな人生を送ってきたのかは知らないが、きっと今まで親兄弟やパートナーや友人や周りの親切な人などが任されてたら動いてくれてたのだろう。
今までは自身が何も知らず動かず学ばずでも、常にだれかしらが助けてくれてて、大して不自由しなかったのかもしれないし、これからもそうだと思ってるのかもしれない。

けれど、世の中そんなもんじゃない。
常にだれかが自分の都合よく動いてくれることなんてあるはずがない。

とはいえ、世の中そんなに捨てたもんじゃないので、一言「助けてください」と言えれば、誰かしら必ず助けてくれる人はいる。
相手に丸投げするのではなく、手助けを求めるのだ。一緒にするのだ。まずは自分が頑張るのだ。

「メニューに何があるか教えてください」
「このお店のシステムを教えてください」
「食券の買い方を教えてください」
「販売機の使い方を教えてください」

もちろん困ってる人がいれば周りが助けてあげるのは当然だと思う。
とはいえ、生まれたての赤ちゃんのように自分では何もできないわけではなく、自分の頭で考え、自分の足で立ち歩き、自分の言葉で話すことができる人間なのだから、声をかけられるのを待つのではなく、自分から言わなくてはいけなかった。
けれどそれができずに、結局今回は誰にも助けてもらえなかった。

「助けてくださいと言えばいいだけなのに…」と思う反面、社会問題として「助けてくださいが言えない問題」が存在するのも知っている。
特に高齢男性は自分の体調や悩みや困りごとを周囲に話すことができず、貧困や老々介護などで疲弊して窃盗や傷害や殺人などの犯罪を犯してしまったり、誰にも知られずに孤独死してしまったりということがあるという。
特に趣味などもなく、人間関係と言えば職場と家庭のみという人が、定年退職後にどこのコミュニティ(町内会やサークル活動など)にも属さずにいると、どんどん人間関係から遠ざかり孤立してしまう。
それでもまだ配偶者がいるうちはいいが、それも離婚や配偶者の要介護化や死別などの状況になると救いようがない。
そもそも他人だけでなく、子どもや親せきなど「自分以外の人間」に助けを求めたり弱みを見せることに慣れていない高齢男性は特にそうなるらしい。
現に私の父も、自分の体調がよくないことを誰にも言うことができずに孤独死してしまった。

「助けてくださいが言えない問題」に立ち向かうべく、自ら手を差し伸べようとする心優しい人に立ちはだかる次の壁が、「年寄り扱いするな問題」。

今回、私が声をかけなかったのもこれにあたる。
私はわりとおせっかいな所があるので、困っている人がいたら結構自分から声をかける方なのだが、その際に幾度となく「年寄り扱いするな(-_-メ)」という返しをされてイヤな思いをしたことがある。
手を差し伸べるにも勇気がいるのに、それを無碍な態度で返されたら、行動を起こすことに躊躇してしまう。
自分一人の時だったら自分が嫌な思いをすればいいだけだが、家族などが一緒の時は、自分以外にも嫌な思いや恥ずかしい思いをさせることになるし、場合によっては危ない目に遭わせてしまう可能性もあるので、余計に行動できない。

是非とも高齢者には、困ってる時には「助けてください」、助けられた時には「ありがとう」と素直に言えるようであってほしいと思う。

ふたつ目はその仕事、ロボットでよくない?問題

高齢者が困ったちゃんだとしても、今回の店員さんの対応はあんまりだと思った。
放置って…

チェーン店なのでマニュアルがあるのは当然で、接客においてもそれに沿ってしているのだろうが、それにしてもマニュアル通りの行動しかしないとしたら、「それってどうなんだろう?」と思う。
(まさかそんなことあるとは思えないが)マニュアルに「困っているお客さんがいても声をかけてはいけない」というのがあったとしても、それをその通りに実行するのはどうなんだろう…
マニュアルって、ある一定の基準を示すだけもので、それを習得したうえで会社やお店のプラスになるようなオリジナリティはあった方がいいと思う。

そもそもこの牛丼チェーンのマニュアルがどういったものかはわからないが、実際にお店を利用させてもらう立場としては、色々よくない点が目に付く。

店員さんの身だしなみもよくないし、店内の清掃も行き届いていない。

料理の提供もどんな調理マニュアルなのか…家族で行ってるにもかかわらず、(一食ずつ作ってるのか?)一人分ずつ間をあけて出てくるので、一緒に「いただきます」もできなければ全部が揃うのを待つこともできない(冷めたりご飯が膨れたりするので)。

店員さんの表情や言葉遣い、立ち居振る舞いなど、どれをとっても感じのいい接客とは言えない。
接客マニュアルに沿うものなのか、個人任せにされててやる気がないのか…
おじいさんに対しても、どんなメニューがあるのか教えてあげたり一緒に食券を買ってあげればよかっただけだし、今回のように任せられたなら看板メニューかおすすめメニューを案内して、それでよいか了承をもらえばいいだけなのに、それをしない。

人間の仕事をしてほしい。

マニュアル通りなだけでなく、人間だからこそできる仕事をしてほしいと思うし、逆にそれができないとロボットに取って代わられるぞ!って思う。

例えば掃除。
ただ床をきれいにするだけならルンバでいいじゃん。
テーブル拭くだけなら配膳ロボでいいじゃん。
利用する人の立場で考えられる人間だから気づける汚れ(窓枠の埃や調味料トレーの液だれなど)を綺麗にしなきゃダメだよね。

それから調理。
入ってきたオーダーをただ順番に作るだけなら調理ロボットでいいじゃん。
各テーブルの状況を考えつつ、調理手順を組み立てて(「これを投入して待ってる間にこっちをして…」みたいな)、バランスよくタイミングよく提供していかなきゃダメだよね。
せめて一人分ずつの提供じゃなく、テーブルごとに提供できて欲しいと思う。

そして接客。
決まったセリフを言うだけならまさにロボットじゃん。
相手に応じて適切な対応、さらにプラスアルファで相手を心地よくする対応ができてこそ人間の仕事だと思うし、これこそが人間に求められる仕事だって思う。

これからの社会で人間は、人間力が求められる仕事でしか生き残っていけない。
日本はまだ高齢者や外国人実習生などの安い労働力に頼っているのでAI化が遅れている面があるが、とはいえこれからどんどん人間の仕事は機械に取って代わられるのは間違いないのだから。
人間にしかできない仕事、人間だからこそできる仕事をできるようにならないといけないと思う。

私もこれからどう働きどう歳をとっていくのか…
とにかく興味を持つことをやめず、関わることをやめず、学ぶことをやめず、行動することをやめず、楽しむことをやめないようにしたいと思う。