えんさんがごみ箱に向かって声をかけていた。
穴の開いた靴下を捨てていたのだ。
まだ子ども達がとても小さかった頃の話。
ある日、えんさんが穴の開いた靴下を持ってきて、「どうしたらいい?」と。
昔だったら繕って履き続けたのかもしれないけれど、ものであふれる現代社会においては靴下はいわば消耗品。
とはいえ、ものを使い捨てにすることを当たり前としたくはなく。
「大切に使って、それでも古くなったり破れたりして使えなくなったのなら、感謝の気持ちを持ってお別れしよう。『今までありがとう』の気持ちで捨てよう」と。
それ以来、穴の開いた靴下や、短くなって削れなくなった鉛筆などを捨てる際には、そのものに対して「ありがとう」と声をかけるようにしていたのだが。
まさか中学生になった今もそれをきちんと続けてくれていたとは…。
生きていくうえで、周りと関わっていくうえで、何より大切なのは「感謝」の気持ちであると、常に心に留めるようにしているし、子ども達にもそれは伝え続けている。
それは人に対してのみならず、ものに対してでも出来事などに対してでも。
自分に関わる物事すべて、何ひとつ当たり前なものなどないからだ。
私が子どもの頃は、よく母親から「『はい』『ありがとう』『ごめんなさい』がちゃんと言えない人はダメだ」と言われていた。
『素直さ』『感謝』『反省』が大事ということだ。
これは大人になって関わる人が多くなるほどに身に染みてきている。
今のえんさんまるさんにこれがどの程度ちゃんと伝わっているかはわからないけれど(かくいう私も、子どもの頃は今ほど理解できていなかった)、感謝の気持ちが大事であることは折に触れ伝え続けていこうと思う。
そして人に限らずものに限らず、大切にできる人になってほしいと願う。
まるさん、鉛筆の両削りは鉛筆の寿命が縮まるからやめてね。
あと、穴が開いて片方ずつになった靴下を組み合わせて履くのはチョットかっこ悪いからやめてね。