本当のやさしさとは…②

キャンプの間、ペットホテルからは連絡はなく、けど気になるので様子をうかがう電話をしたところ、「たくさんではないですがちゃんと食べてますし、お薬も飲んでます」とのことだった。

結局、予定日数(二泊三日)過ごすことができた。
最終日の朝は少し早めに撤収して、お迎えに。

そこからまた状態が急激に悪化。

全くごはんを食べない。
当然薬も飲まない(飲めない)。
水も飲まない。
異常な回数の排尿。

見る見るうちにガリガリに痩せ、立ち歩かなくなった。

このままでは命の危機だと思い、病院へ。
排尿の状態から腎臓の機能がかなり悪化していて、体内に毒素が溜まっている状態で、そのせいで食欲もないのではないかとのこと。
とりあえず栄養補給の点滴と、腎臓の注射を。
そしてこのまま食べられない状態が続くようなら、毎日通院した方がいいかも…とのこと。

その晩、どうするのが一番良いのか家族で悩んだ。
その結果、痛みや苦しみがあるならそれはできるだけ取り除いてあげつつ、できるだけ点滴に頼らずに何かしら食べられるものはないか模索しつつ、無理な治療はしないでおこう。ということに。
キャンプ前に一度快方に向かいそうな感じがあったので、まだ何か可能性が残っていて、できることがあるのではないかという判断。

翌朝、あくびのいる部屋をのぞいたら、目線だけこちらに向けるものの体を起こすことはせず、数種類のごはんを用意したもののまったく興味を示さず。
頭や体を撫でると、痛がったり嫌がったりすることもなく。
気持ちよさそうにしているので、ただひたすら撫でた。
他にしてあげられることが何もないかもしれないという無力感を感じながら・・・。
そして気づいたら、日頃は父っちゃさんの役目になっていたブラッシングをしてあげていた。

その後、店休日だったのでいつもの仕入れに出掛けた。
仕入れの最中、父っちゃさんから様子をうかがう連絡があった。
普段は仕事中に電話をしてくることがないので、余程気になるったのだろう。

昼過ぎに仕入れたものの仕分け・搬入して帰宅してすぐにあくびのいる部屋をのぞいた。
やはり目線のみこちらに。
置いておいたごはんは手つかずのまま。
再び頭や体を撫でた。「大丈夫よ。大丈夫よ。」と。

それから家事などをしてるところへ父っちゃさんが帰宅し、あくびの様子を見に…やはり全く身体を動くことはないものの反応はした(とのこと)。

それからさらに数十分後、部屋をのぞいた父っちゃさんが私の所へ来て、「逝っとる・・・(T_T)・・・」と声を震わせた。
こんな日が来るのはそう遠くないかもしれないと思いつつも、今日明日のことではないだろうと、まだ心の準備が整っていなかったので、俄かに信じられない気持ちであくびのところへ…。

私が部屋に入ってもあくびは全く動かない。
身体だけでなく、目線さえも…。
身体をさすっても何の反応もないけれど、まだうっすら温かく柔らかい・・・。
まるで眠っているかのようだけれど、目や口は半開きで自発的に動いている箇所はどこにもなく。

あくびの死を確信した瞬間、涙が溢れた。
溢れ出る涙を拭うこともせず、ただひたすら綺麗好きだったあくびの身体をきれいに…きれいに…。
綺麗になったあくびを抱きかかえ、まだ柔らかいあくびの顔を整える。
半開きの目や口を閉じ、きれいな…眠っているような状態に。
あくびが腕の中で膝の上で、少しずつ固く冷たくなっていくのを感じながら出てくる言葉は感謝ばかり。
「ありがとう」
「ありがとう」
「ありがとう」
目からは涙が止まらない。

そこから数分後、習い事のスイミングから子ども達が帰宅。
目の前で起こっている現状を伝えるべく、普段からあくびのお世話をしているまるさんだけでなく、犬アレルギーで接触を避けていたえんさん(動物大好き)もあくびの部屋に呼んだ。

泣きながらあくびが死んでしまったことを伝える父っちゃさんと、ピクリとも動かないあくびを膝に泣いている私を前に、まるさんは少し驚き戸惑いの表情をするも、すぐに悲しみの表情に…普段からお世話をして可愛がっていたからだろう。
普段あまり交流がなない分、私たちほど悲しみを感じなかったのか、それとも死というものの実感がわかなかったのか、えんさんはキョトンとした表情で立っていた。

その夜はあくびを偲んで泣きながら夕食を食べた。

あまりに泣きすぎて、翌日は信じられないほど瞼が腫れて、驚くほど不細工に…。